多様な非対称データのための分析モデルとその応用(2021−2022年度)
・研究計画 行動科学や自然科学などの広範な分野においてさまざま非対称関係データが観測される。さらに、近年では多次元多相データや疎なデータとしての観測などによりデータは多様となり、一層その分析から得られる知見が重要となってきている。例えば、マーケティングで扱うデータには、ブランドスイッチデータ、アクセスログデータ、Webコミュニケーション・データなど2つの対象間の関係性を表す近接性データが非対称である場合が多い。 これらの研究を通じて対称データの分析からでは得られない対象間の関係に関する知見が得られることが多くその研究分野のみならず他分野・複合分野での研究に貢献することが期待される。 特に、データのデジタル収集が可能となり、得られるデータも対象間の関係×時間×場所(空間)として表現される多次元多相データや疎なデータのように多種多様となっている。また、対象間の非対称データのみではなく、それに関連したデータも同時に収集されるようになってきている。 そこで、実務での応用可能性を考慮しながら非対称データの分析に関して、 ・非対称な多次元多相データや疎なデータおよび関連したデータの分析モデルの開発 ・大容量のディジタルデータ(マーケティングなどの分野など)の非対称データの分析を通じて、各分野での応用研究などへ貢献し、また、 ・非対称データ分析推進のためのデータライブラリーの整備 などを通じて、従来の2者間の非対称関係データのみならず多次元多相データや疎なデータなデータでの複雑な非対称関係データを行動計量学の視座から分析し、得られる一層の知見をもとに、非対称関係データ分析の研究を推進する。
活動(2021年度)
(1)第49回行動計量学会大会(杏林大学)での特別セッション 日時8月31日(火) 特別セッション(120分)非対称多元データ SB4-1 千野 直仁(愛知学院大学), An elementary theory of a dynamic weighted digraph (4) SB4-2 岡太 彬訓(立教大学)・今泉 忠(多摩大学),非対称多次元尺度構成法における非対称性の評価 -I- : How to evaluate asymmetry in asymmetric multidimensional scaling I SB4-3 今泉 忠(多摩大学経営情報学部)・岡太 彬訓(立教大学),非対称多次元尺度構成法における非対称性の評価 -II- : How to evaluate asymmetry in asymmetric multidimensional scaling II SB4-4 中山 厚穂(東京都立大学大学院経営学研究科), ユーザー生成コンテンツのトピックの解明と非対称性を考慮した分析 非対称データの分析のためのモデルや非対称性についての検討について発表がなされた。
(2) 第49回行動計量学会大会(杏林大学)でのラウンドテーブルディスカッション 日時9月1日(水) ラウンドテーブルディスカッション(60分) 多様な非対称データのための分析モデルとその応用 次の3件の発表があった。 SB6-1 中山 厚穂(東京都立大学大学院経営学研究科) , マーケティングにおける非対称データ分析の適用可能性 SB6-2 千野 直仁(愛知学院大学), 化学反応系、電気回路網、ニューラルネットワークなどの 非対称データとそ れらの構造及び力動特性 SB6-3 初田 泰敏(大阪大谷大学薬学部), 抗菌薬の交叉耐性状況の可視化 非対称データ分析の臨床応用への第一歩
活動(2022年度)
(1)第 50回行動計量学会大会(沖縄)での特別セッション:非対称近接性データの分析の最前線 以下の5件の研究発表が行われた An elementary theory of a dynamic weighted digraph (5) ○千野 直仁(愛知学院大学心理学部) Determining the length of drift vector I ○岡太 彬訓(立教大学名誉教授),今泉 忠(多摩大学) Determining the length of drift vector II ○今泉 忠(多摩大学経営情報学部),岡太 彬訓(立教大学) 外部データを用いた正則化を伴う非対称多次元尺度構成法について ○谷岡 健資(同志社大学生命医科学部医情報学科),宿久 洋(同志社大 学文化情報学部文化情報学科) 分位点ノルムを用いた多次元尺度構成法における分位点パラメータの推定 法について ○土田 潤(同志社大学),宿久 洋(同志社大学)

(1)第 50回行動計量学会大会(沖縄)でのラウンドテーブル 非対称近接性データ分析の様々な分野での適用可能性ー機械学習分野での 応用ー 機械学習分野での非対称の扱いについて、鳥取大学の岩井氏からの話題提供をいただいた。 非対称局所性保存射影とその応用 ○岩井 儀雄(鳥取大学大学院工学研究科)

非対称分析のための理論と応用(2018-2019年度)
研究目的 2者間の関係を考える場合に,その関係が対称的な関係ではなく,知人間の関係やネットワーク上の対話量など,本質的に非対称な関係が想定される場合について,その分析のための理論および方法について研究し,行動計量学の研究範囲をより広げるために以下のような研究計画のもとに活動を行う 研究計画 社会行動科学から自然科学に至る広範な分野で観測される非対称関係データに関する計量心理学、数理心理学、数理統計学、地理学、政治学、社会学、マーケッティング、生物学、物理学、化学分野などでの各種のアプローチについて、各分野の研究者の間の学会発表等の相互交流を継続的に行い、非対称データを発生せしめる現象に関する学際的な理論的研究や応用研究について,以前の研究部会による成果も踏まえて行う。
活動
2018年度 日本行動計量学会第46回大会(慶應義塾大学三田キャンパス)において, 特別セッション 非対称データの分析-理論と応用-を設けて,以下の4件の研究発表を行った. An elementary theory of a dynamic weighted digraph ○千野 直仁(愛知学院大学心身科学部) 有方向性グラフに関する時間軸での変化を捉えるための理論に関しての発表がなされた. 単相 2 元非対称多次元尺度構成法の比較と検討 -距離モデルの場合- ○岡太 彬訓(立教大学),今泉 忠(多摩大学) 非対称類似度/非類似度を分析するためのモデルと手法について.Distance-radiusモデル,slide-vectorモデル,2相2元データとみなすモデルについて比較検討がなされた. 対角要素に依存しない slide vector model の提案 ○今泉 忠(多摩大学経営情報学部),岡太 彬訓(立教大学) 単相2元非対称類似度行列を分析する slide-vectorモデルでは同一の対象間の類似度が分析に影響する.そこで,この部分に影響しないモデルについて提案された. 2 相 3 元 Dominance 点モデルを用いた Functional MDS につい ○土田 潤(東京理科大学工学部情報工学科),宿久 洋(同志社大学文化情報学部 複数の時点から2 相 3 元非対称類似度行列を分析するためのDominance 点モデルにおいて,布置とDominance点が直行行列の変換のもとで変わるとしたモデルを提案した.
2019年度 日本行動計量学会第47回大会(大阪大学吹田キャンパス)では,特別セッションを設けて非対称分析の理論と応用に関する研究促進を図った. An elementary theory of a dynamic weighted digraph (2) Its relation to the theory of evolutionarily stable strategy ○千野 直仁(愛知学院大学心身科学部) 2018年度の継続研究の成果の発表がなされた.特に微分方程式による表現の場合のその性質について発表がなされた. スライドベクトルを用いた Distance-association model について ○土田 潤(東京理科大学工学部情報工学科),宿久 洋(同志社大学文化情報学部) スライドベクトルモデルを対象×項目からなる2相2元データへの適用としてDistance-association modelを提案した.特に反応確率を要素とするデータ行列への適用モデルについて提案された. 単相 2 元非対称類似度行列の楕円モデルの適用可能性 ○今泉 忠(多摩大学経営情報学部) Distance-radiusモデルの拡張として,非対称関係の表現として円ではなく楕円を用いたモデルについて説明され,どのようなモデルを選択するかについて発表がなされた. 画像データの分類によるブランドイメージの類似性と混同についての分析 ○中山 厚穂(首都大学東京大学院経営学研究科) Webに投稿されている写真データやビデオデータに対しての非対称多次元尺度構成法の適用について発表された.特に,写真データやビデオデータの解析ではCNNモデル よる深層学習モデルが適用された. 特性に基づくブランドの評価 ○岡太 彬訓(立教大学),鶴見 裕之(横浜国立大学) ブランド選択の変化を捉えるために,特に,ブランドスイッチングにおける優劣関係を明らかにするために,3時点の隣り合う2時点間のブランドスイッチング行列の差の行列について特異値分解を用いた非対称多次元尺度構成法による分析について発表された. 発表タイトルも理論に関する発表や応用に関する発表などがあり,また,分野も広いものであった. 2019年度では,広く研究部会メンバー以外も含めるようにラウンドテーブルを設けた. 話題提供として多摩大学の今泉 忠氏による「非対称分析から見えること,見えないこと 」 首都大学東京の中山 厚穂氏による「マーケティングにおける非対称データの活用」して応用場面の問題点が提起された その後ラウンドテーブル参加者と活発な議論がなされた. 2年間の研究部会活動として外部研究者を招いた研究集会を開催する計画であったが,2020年2月〜3月の外部環境の変化により開催できなかった

